ふと、温かいものが恋しくなる夜があります。
「今夜は、家でゆっくり温かいものを作って食べようか」。そんな話になり、献立は唐揚げとカニ汁に決まりました。台所で鶏肉を切り分けていると、次男がやってきて「僕もやりたい!」と目を輝かせます。
それならと、鶏肉に粉をまぶす作業をお願いすることに。小さな手で一生懸命、時々つまみ食いしそうになりながら、楽しそうに粉をまぶしてくれました。その間に、私たちはカニ汁の準備。きのこをほぐしたり、野菜を切ったり。ふたりで立つ台所は少し手狭ですが、わいわい言いながら作るのもまた楽しい時間です。

しばらくして、揚げたての唐揚げと、湯気の立つカニ汁が食卓に並びました。

次男が手伝ってくれた唐揚げは、かりっと揚がった衣に、中はふっくら。カニ汁からは、ふわりと湯気と一緒に磯の香りが立ち上ります。ひと口すすると、カニのうまみが溶け込んだ味噌のやさしい味が、じんわりと体に染み渡っていくようでした。
「これ、僕がやったやつ!」と唐揚げを指さして、得意げな次男。夫も「お手伝いしてくれたから、特別おいしいね」と顔をほころばせます。その他にも、買ってきたばかりの甘エビや、しゃきしゃきとした歯触りが残るキャベツの和え物などを少しずつつまみながら、ゆっくりとした時間が流れていきました。

アメリカ、東京、西日本と、これまで様々な土地を移り住んできたわが家。それぞれの場所で、それぞれの「いつもの味」がありました。この街に来てからは、地元の食材を使って、こんな風に気取らない和食を作る機会が増えたような気がします。
特別な献立でなくても、みんなで作って一緒に食べる時間は、一日を穏やかに締めくくってくれます。暮らしのなかに、こういう温かな食卓の記憶が少しずつ増えていくこと。それが、この土地に根を下ろしていくということなのかもしれない、とそんなことを思った夜でした。


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